全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)は2021年3月18日に、銀行間の送金等に関わる手数料を現在の半分程度に引き下げると発表しました。
この引き下げは同年10月1日を予定しています。これによって、各銀行が設定している振込手数料等の引き下げも見込まれることになります。
銀行間手数料引き下げによる銀行業界への影響を解説します。
約1年前にこのブログでは全銀ネットが運営する全銀システムについて解説していました。全銀システムの詳細はご参考までこちらをご覧ください。
銀行間手数料とは何か
全銀システムを通じた振り込みの取引において、銀行間取引手数料をお互い支払う取り決めがあります。
銀行同士で手数料を払ったり、受け取ったりしているのです。
この銀行間手数料は、1回の振込金額3万円未満は1件あたり117円、3万円以上は1件あたり162円。3万円以上と3万円未満の取り扱い件数によって違いがありますが、仮に半々だとしたら、中間値の140円前後が振り込まれる側の銀行の収益となっています。
皆さんが支払っている振込手数料の一部は、銀行の収益、一部は振込先の銀行の収益になっている仕組みです。
今回の全銀ネットが発表した脳は、この銀行間手数料を約半分にする、ということなので、単純に銀行の儲けが減るということになります。
銀行間手数料引き下げの影響
相手の銀行(振込先の銀行)に支払うコストが減るわけですから、振り込みを受け付けた銀行が振込手数料をそのままの水準に維持するとは思えません。
振込のような為替取引をたくさん使ってもらうことは銀行の収益源として重要なことです。
この銀行間手数料引き下げによって、振込手数料を引き下げる銀行が出てくるでしょう。
特にネット銀行系はそもそも振込手数料が安いうえ、さらに引き下げを行って一気に顧客獲得に向かっていく可能性もあります。
簡単に下げられない手数料
いまの銀行業界は長期にわたるマイナス金利、コロナ禍による企業活動低迷などの影響で、銀行の収益機会は限られた状況になりつつあります。特に地方銀行は以前から苦しい状態が継続しています。
さらに手数料を引き下げるようなことをしてしまうと自分の収益を自分で圧迫してしまうことにもなりかねないので、簡単に振込手数料を引き下げられないのが、本音でしょう。
ただし、それでは顧客を失うだけ。殿様状態で銀行が経営できたのは古い過去の話であり、現在はサービス業です。顧客に受けれられなければやがて淘汰されてしまいます。
銀行間手数料引き下げを機に、振込手数料を思い切って引き下げて顧客サービスの質を上げることができるのか。
今後の銀行の動きに注目です。
ネット銀行は優位かもしれない
ネット銀行はリアルな店舗がなく、オペレーションコストが通常の銀行よりも少なくて済む、という利点があります。
したがって、一般的に各種手数料はそもそも低めに抑えられています。
今回の銀行間手数料の引き下げは、ネット銀行にとっては追い風となるかどうか。各社次の一手が気になるところです。
まとめ
銀行間手数料の引き下げが、すぐに利用者にとってメリットとなるかは今のところわかりません。
ただ、手数料が高止まりしたままの銀行は立ち行かなくなることは間違いないでしょう。便利な送金サービスを展開するフィンテック会社も続々と登場しています。顧客に選ばれてこその銀行であり、今回の銀行間手数料がこうした古い業界慣行を、新しいより良いものに変えていくきっかけとなることを願います。
最後までお付き合いありがとうございました。
コメント