全銀システムと銀行間手数料の秘密

金融
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全国銀行データ通信システム、通称「全銀システム」に公正取引委員会による調査が入っている模様です。日本のほぼすべての金融機関が参加する全銀システムに何か問題があるのでしょうか。

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全銀システムとは

全銀システムは、銀行間の資金決済取引を担う金融インフラであり、日々の振り込みなどの送金を処理、日本にあるほぼすべての金融機関が参加しているネットワークインフラです。

全国銀行資金決済ネットワークのウェブサイトによれば、

「全銀システムは1973年に発足し、その後の内国為替(国内の為替のこと)業務の発展や制度への参加銀行の拡大を経て、現在ではわが国のほとんどすべての民間金融機関を網羅しています。」

とのこと。

ほぼすべての金融機関ってことは、1,200くらいの金融機関が参加していることになります。

普段私たちが銀行窓口やATM、インターネットバンキングなどで、A銀行からB銀行へ振り込みをする際に、この全銀システムが活躍しています。

システムはこれまで何度かバージョンアップしているようです。現在は第7次全銀システムで、取引量の拡大やセキュリティ向上に対応しているとのこと。

全銀システムの運営会社は、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(職員数52名)です。

全銀システムの運用状況

為替取扱高は公表されています。

例えば、令和元年12月では、為替件数が148,490千件、金額が2,683,307億円(つまり1か月268兆円の取引額)というとんでもない規模です。日本の決済の心臓部分と言っても過言ではないでしょう。

この大事な心臓部分に何故、公正取引委員会が調査に入ったのでしょうか。

銀行間送金手数料の存在

この全銀システムを通じた取引において、意外と知られていないのですが、銀行間取引手数料なるものが存在します。A銀行からB銀行に振り込みたい場合、振込手数料をA銀行に払っているはず。実はその振り込み手数料の大半は、振り込まれる側の銀行(B銀行)に支払っているのです。

銀行同士で手数料を払ったり、受け取ったりしているのです。

つまり、銀行は振り込みをされると収益が上がっていくという構図。この銀行間手数料は具体的には3万円未満は1件あたり117円、3万円以上は1件あたり162円。3万円以上と3万円未満の取り扱い件数によって違いが出るが、仮に半々だとしたら、中間値の140円前後が振り込まれる側の銀行の収益となっています。

その手数料はどこから来ているのか。そうです、皆さんが普段振り込み手数料として銀行に払っている手数料の一部が銀行手数料に充当されているのです。なので、一般的には他行あての振り込みは手数料が高いんです。

上記の手数料水準を前提とすると、振り込みを受け付ける銀行(A銀行)は、140円以上の手数料を顧客からとらないと赤字になってしまうのです。

さらにこれとは別に、銀行は全銀システム利用料をまとめて全銀システムに支払っています。1件あたりではなく、かつ非公表(のはず)なのでなんとも言えませんが、1件あたり少なく見積もっても数円規模の利用料相当を払っているはずです。

銀行間送金手数料は以前は一律で決めていましたが、独占禁止法に抵触するおそれから、現在は金融機関同士が決めるルールに変わりました。が、過去の慣習により手数料水準はあまり変わっていないのが実情です。

この全銀システムを使った銀行間送金手数料の高さが問題となっている模様です。

新しい金融サービスが育たない?

〇〇ペイなど、昨今ではキャッシュレス化の流れの中、少額決済が増えてきています。仮にこれら少額決済を全銀システムで使ったらどうなるでしょうか。

そもそもいまの全銀システムは預金を扱える金融機関しか接続できないのですが、仮にその他のフィンテック事業者が接続できたとしても、1件あたりの手数料が高いため、少額決済には向いていない。というか赤字ですね。

ここに公正取引委員会の問題意識がある模様で、全銀システムという超巨大な決済システムの存在が、日本のフィンテック産業、新しい金融サービスの発展に邪魔なのでは?ということなのです。新しい決済サービスが育たないってことですね。

3月に公正取引委員会は何らかの調査結果を出すようですが、手数料引き下げの提言などは盛り込まれる可能性があり、銀行の既得権益であった「振り込まれ手数料」収入が今後減ってしまうことになりかねません。

一方で、利用者側にとってみれば、手数料引き下げは嬉しいことですし、フィンテック事業者を交えた健全な競争環境・市場発展につながって、いま以上に便利な決済手段が登場するかもしれません。

銀行は危機感を持って次の一手を

全銀システムはまだ当面は稼働を続けると思いますが、銀行はこれまでの既得権益にしがみつくことなく、いっそ全銀システムが無くなることを想定したサービス作りをしなくてはならなくなるのだと思います。

全銀システムを使った資金決済が当たり前といった時代の終焉はすぐそこまで来ているのかもしれません。

 

いかに危機意識をもって新しいサービスを作ることができるか、各金融機関の生き残りをかけた勝負は決済分野で始まっています。

以上、全銀システムにまつわる解説でした。お付き合いありがとうございました。

では。

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この記事を書いた人
Terry

新規事業企画担当として日々奮闘。日本の金融業界の動きや世界の金融の潮流、銀行員お役立ち情報などを発信しています。

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