ペイロールカードで銀行が不要になる時代

金融
スポンサーリンク

ペイロールカードという言葉を聞いたことがありますでしょうか。

現在、金融業界、フィンテック業界では、このペイロールカードに注目が集まっています。「給与のデジタル払い」「デジタルペイロール」などのキーワードもよく見られるようになってきています。

ペイロールカードって何?銀行と関係あるの?という方の疑問解決にお応えしたいと思います。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

ペイロールカードとは

給与を受け取れるカードのこと

ペイロールとは給与支払いのことです。ペイロールカードとは、ずばり、給与を受け取れるカードのことです。

ペイロールカードを持てば、そのカードに給与支払いがなされて、そのカードを使って、買い物や公共料金の支払いなどの生活費にそのまま使えるというものなんです。

米国では以前よりペイロールカードが定着しています。

銀行口座が不要

みなさんのお給料は、たいていはお勤め先企業から毎月みなさんの銀行口座に振り込まれると思います。

ペイロールカードは、カードに直接給与が入金され、そのままカードとして使えるので、もはや銀行口座が不要となります。

海外では、銀行口座を持てない人が多いという背景があります。最近は銀行口座開設にあたっては犯罪防止のために身分証明書提示も含めて、手続きが厳しくなっています。例えば、そもそも身分証が無い人も少なくない米国では、銀行口座が開けない人が多いようです。

そこで誰でも給与を受け取れるペイロールカードという仕組みが普及したわけです。

日本にもペイロールカードはあるの?

法律のかべ

結論からすると、日本においては、ペイロールカードは現在ありません。

労働基準法24条で、給与の支払いについて定めています。

「通貨で直接労働者にその全額を支払わなければならない」とという、現金払いが原則となります。

例外的に銀行口座や証券総合口座への支払いが労働基準法施行規則で認められ、銀行口座振込が広く利用されています。

ペイロールカードへの給与支払いはこれらに含まれていないため、法規制を変えるか、こうした例外としてに加える必要があります。

外国人労働者の増加

日本では外国人労働者が年々増えていることは、みなさん何となく肌感覚で感じていると思います。

最近では、コンビニの店員さんも多国籍ですよね。

さて、外国人の人たちが日本で銀行口座を開くのは、かなり大変です。就労証明出したり、あるいは6か月以上の滞在実績がないと居住者としてみなされず、口座が作れない(金融機関によって取り扱いは異なります)など。

一方で、外国人を採用したい企業も増えています。

給与を振り込みで行いたいが、その外国人従業員が口座をもっていないとすると、面倒ですよね。

その解決策の一つが、ペイロールカードなのです。

キャッシュレスの推進

米国のペイロールカードには、VISAやMASTERといった国際ブランド一体型になっている。つまり、国際ブランドのプリペイドカードとほぼ同じです。

日本でもこうしたペイロールカードが導入されれば、そのまま店頭でもキャッシュレスで利用ができ、政府が普及に頑張っているキャッシュレス市場の拡大・利用推進に貢献してくれることになります。

日本でペイロールカードはいつ解禁するの?

解禁までには準備が必要

ペイロールカードの解禁は厚生労働省次第でしょう。

現在、ペイロールカード提供を狙っている資金移動業者、フィンテック関連会社などが、政府関係者との勉強会やロビー活動も行いながら、政府側でも検討を進めているようです。

労働基準法は厚生労働省所管ですが、金融庁もずっと黙っているわけにはいかないでしょうから、利用者保護の観点など、導入解禁に向けては課題整理を進め、法規制の整備・仕組みが必要があり、解禁まではもう少し時間がかかると思います。

ペイロールカードによる銀行への影響

銀行の給与振り込みの位置づけ

銀行にとっては、給与振り込みを獲得する、というのは法人営業担当者にとっては、必須の営業目標です。

給与振り込み、略して「給振」ですが、これをとることによって、毎月の給与日に安定的に振込手数料が入ってきます。

さらに従業員の給与受け取り口座を獲得できる可能性が高くなります。

給与受取口座をとれるということは、従業員それぞれのメインバンク口座を獲得することになりますので、日常の振込による手数料収入だけではなく、将来の住宅ローンなどの大きな収益もとれる可能性が一気にアップします。

こうしたことから、給振獲得は、銀行にとって、総合採算拡大のための重要な営業獲得アイテムとなっています。

ペイロールカード解禁によって受ける影響

ペイロールカードは銀行口座が不要であることをお伝えしました。

もうおわかりですね。銀行にとって、給振獲得の機会が減ってしまうことになります。

ペイロールカードが、世の中当たり前になってしまったら、銀行の給与振り込みの機能はなくなり、これまで給振中心に獲得していた口座や将来の収益機会も逸失することになるわけです。

ペイロールカードは、銀行業界にとって大きなゲームチェンジャーになる可能性を秘めています。

給与がペイロールカードに入金され、そのまま生活費のためのキャッシュレス決済に使われるとなると、銀行の出番がありません。

銀行がやるべきこと

3つの選択肢

このまま銀行口座がペイロールカードにとって代わられる時代は来るのでしょうか?

銀行として取り得る選択としては、どのようなものがあるのでしょう。

例えば、以下のような選択が考えられます。

  1. 給振関連サービスを拡充する
  2. 外国人が口座を作りやすいような対応を進める
  3. ペイロールカードに参入する

1は、すでに給振でガチガチに固まっている伝統的な銀行が取り得る戦略でしょうか。給振続けてくれればお得ですよ、というオーソドックスな戦略ですね。

2も比較的進んできていると思われますが、まだまだ外国人によっては口座が作りづらい状況は続いています。法律に抵触しない範囲で、銀行独自に外国人向けの開設基準を作るなど、柔軟な対応が必要でしょう。

3が最も重要な事項だと思います。やはり市場の流れがペイロールカード解禁に向かっているのですから、自らもペイロールカードに参入するのが良いのではないでしょうか。

どのようにペイロールカードに参入するか

資本力と開発力があれば、みずからVISAなどの国際ブランドと提携してペイロールカードを作ってしまうのが手ですね。ただし、この場合、自らの給振機能とカニバリを起こしますので、戦略に整理が必要でしょう。

おそらく現実的なのは、すでに準備を進めている資金移動業者やフィンテック会社と組んで市場に参入することでしょう。銀行の役割はこれらの資金移動業者に対する資金繰り支援だったり、API連携を通じた給与支払い者からのカード入金自動化など、銀行が裏方として活躍できる場面はいくらでもあります。

いずれにしても何らかの形でかかわっておくことで、ペイロールカード拡大による収益へのネガティブインパクトを打ち消すことができるかもしれません。

まとめ

ペイロールカードの解禁まではもう少し時間がかかる見通しですが、業界では着々と解禁に向けて準備が進んでいるようです。

何もせずに指をくわえている銀行と、あらかじめ戦略的に動き始めている銀行とでは、将来の運命が大きく変わってくるかもしれないですね。

今後もペイロールカードの動向に注目していきたいですね。

最後までお付き合いありがとうございました。

コメント

プロフィール

この記事を書いた人
Terry

新規事業企画担当として日々奮闘。日本の金融業界の動きや世界の金融の潮流、銀行員お役立ち情報などを発信しています。

Terryをフォローする
スポンサーリンク
スポンサーリンク