銀行のジョブローテーションの廃止

金融
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先日、銀行のジョブローテーションの廃止をするというニュースが流れました。日本全国の銀行員がこのニュースに反応するのと同時に、何それ?と思った人も多いと思います。今日は銀行におけるジョブローテーションについて考えてみたいと思います。

 

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銀行がジョブローテーションをする理由

同じ仕事を長くさせない

皆さんは金融庁の「監督指針」というものをご存じでしょうか。

銀行は免許制度であり、免許を与えている金融機関が適切な業務運営を行うために金融庁は監督しています。監督される側にとってみれば、何を気を付けていればいいの?ってことになるので、金融庁も親心の一環として、こういうところをよく見ているから留意しなさいよ、という監督指針を出しているんです。

その監督指針の中に、人事管理に関する項目があります。

「人事管理にあたっては、事故防止等の観点から職員を長期間にわたり同一業務に従事されることなくローテーションを確保するように配慮されているか」

これがあるために、各銀行は定期的なジョブローテーションをせざるを得ない、ということでした。

そして今回の話題はこの監督指針を撤廃するということです。

銀行は事故防止の観点で人事異動している

銀行のジョブローテーションの背景

銀行は不祥事がいっぱい?

監督指針の中に、「事故防止の観点」とあります。

これは想像がつくとおもいますが、不正、着服などのお金にまつわる事故を指しています。

銀行では店舗には現金が山のようにあり、顧客の通帳を預かり、融資も〇億円単位で取り扱っています。こんな日常を過ごしていれば必ず不正を行う輩は出てくる、という完全な性悪説に立った見方ですね。

事実、過去これまで多くの不正が起きており、〇〇銀行の行員が〇〇円着服、なんてニュースは定期的に流れています。

繰り返される不正や顧客との癒着がされないように、定期的に担当者を変えることがて一定の歯止めとなる防止策とされてきたのです。

不正や癒着を防止するために効果あり

銀行の対応

こうしたジョブローテーションを意識して、銀行員は定期的に人事異動で職場が変わる経験をしています。諸々の事情やタイミングなどにもよりますが、通常は1年半から3年程度で人事異動がなされるイメージです。

同一部署で5年を超える長期在籍者はゼロではないものの、少数派。

これらはリスト化され、人事部でも管理され、常に次回人事異動者の優先候補者として挙がってきます。さらに、このリストは金融庁にも提出されることがあり、なぜ長期在籍となっているのか、金融庁から説明を求められることもあります。

こうしたヒアリングを受けること自体、人事部にとっては手間がかかるため、なるべく早期異動させたい、という意向が強まります。

金融庁も銀行の対応をチェックしている

銀行員の人事異動の弊害

お客様と仲良くなれない?

早期の人事異動となると、一言でいえば、顧客利便性の低下につながる、ということです。

法人取引の場合であれば、せっかく担当者も顧客のことを理解した、顧客も担当者と仲良くなって、あうんの呼吸で(とはいかないまでも)融資などの法人取引ニーズを汲み取り、企業成長を上手にサポートすることができるのに、担当者が変わることで積み上げてきた会話がゼロとなってしまうこともあります。

私の経験に基づいた感覚ですが、2年だと絶対に短いと思います。おそらくお客さまも同様でしょう。

昔はよかったかもしれませんが、最近では長期に事業を見守る必要があるプロジェクトだったり、M&A実行後の立ち上がりを時間をかけてサポートすることも増えています。不正防止のためなので担当変えます!というのはあまりにも顧客目線を無視した行動です。

一方で、リレーションシップバンキングが重要だ、という当局発言もあるのですが、リレーションを構築するためには繰り返しですが、1年、2年では絶対に無理です。これでは本当の信頼関係構築はできません。

ジョブローテーションの弊害はまさにここにあります。

短期間の異動ではお客様と信頼構築できない

ジョブローテーションのメリット

多くの経験が積める

メリットとしては、監督指針の通り、不正防止、癒着防止などがあげられますが、ほかにもあります。

銀行に限ったことではありませんが、仕事を変える、職場を変えることが、本人のスキルアップやキャリアアップにつながると思っています。同じ仕事をして専門性を磨くことも大事ですが、若いうちは様々な職場を経験してスキルアップをし、成功も失敗もたくさんしておくことが大事であり、私自身も同僚や後輩が人事異動を重ねるたびに成長していく姿をたくさん見てきました。

成長したバンカーは巡り巡って、お客さまに適切なバンキングサービスの提案が可能となり、より信頼されるという理想的な好循環を作ることもできます。

これはジョブローテーションのメリットとしていえるでしょう。

経験の幅が広がることで、提案力が上がる

意外なジョブローテーションのメリット

やや番外編的な観点です。

銀行はいろんなひとがいます。自分に合わない人もたくさんいます。やや病んでる人もいます(笑)

ジョブローテーションで職場の人間関係がリセットできます。これは銀行員人生の中で、ある種ガス抜きというか、ストレスを断ち切る作用をしているのかもしれません。

うーん、後ろ向きですな(笑)

これからの銀行の人事運営

人事戦略が重要になる時代

これまで大部分の人材を機械的に行っていた人事異動をしてきた銀行は困るでしょう。これからは行員一人一人の能力とキャリアパス、現場の実際の状況を把握したうえでなければ人事異動の適切なタイミングと異動先が見えないと思います。

例えば重要顧客については担当者は長めにつける、営業部門の中でも専門性の高い部署の人材は相対的に固定化傾向にする、などメリハリをつけた人事運営が求められるでしょう。

そしてこれを実践するためには、人事部だけでは無理です(ものすごく家庭的な金融機関で、しょっちゅう人事面談があれば別)。

人事権を人事部だけにするのではなく、ある程度現場にも落として(部門長の決定のほうが人事部意見より上、などにする)、人事異動の判断基準も刷新する必要があるでしょう。

人事と現場の意思疎通が必要か

こうした人事戦略を実践するためには、人事部だけでは難しでしょう。

ものすごく家庭的な銀行で、しょっちゅう人事面談があれば大丈夫かもしれませんが。

人事権を人事部だけにするのではなく、ある程度は現場にも落として、人事異動の判断基準も新しいものに刷新する努力が必要でしょう。

そのためには、現場と人事の意思疎通が重要となると考えます。

全ての行員が当事者意識を持つ必要がある

まとめ

お金に色は無い、といいますが、銀行の仕事もさほど他行と差はないため、その人材が重要視されます。これから勝ち残る銀行は適切な人事施策を実践できることが必要なのではないでしょうか。

顧客の信頼を得るために現場・本部が一体となって、自らの運営を抜本的に見直す時期が来ていると思います。金融庁の監督指針廃止を絶好のきっかけと前向きに捉えて自社の人事施策を積極的に見直した銀行が、5年後10年後に大きく差をつけて業界を牽引していると思います。

お付き合いありがとうございました。

では。

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プロフィール

この記事を書いた人
Terry

新規事業企画担当として日々奮闘。日本の金融業界の動きや世界の金融の潮流、銀行員お役立ち情報などを発信しています。

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