石炭火力発電の風当たりが強くなっています。
地球温暖化、環境保全などから、石炭火力発電を削減し、天然ガス発電や、風力発電などの再生可能エネルギーへシフトする動きが進んでいます。
発電所建設には多額の資金が必要であり、通常は銀行が融資して資金を賄います。
大型のものになると、複数の銀行団によるシンジケートローン方式でプロジェクトファイナンスが組成されます。
石炭火力削減が世界的に進んでいる中で、銀行が石炭火力向けの融資をしているために、その銀行に対しても風当たりが強くなってきました。
何が起きているのでしょうか。
石炭火力発電の仕組み
火力発電の仕組み
石炭や石油などの燃料ををボイラーで燃やすことによって、ボイラー内に流れている水を温めて高温・高圧の蒸気を作ります。
その蒸気が同じく設備内にあるタービンを回転させ、電気を作り出します。
これが火力発電の仕組みとなります。
石炭火力発電の仕組み
石炭火力発電所は、燃料である石炭を、微粉機で粉状に粉砕します。
粉砕された石炭をボイラーで燃やして蒸気を発生させて、タービンを回して発電する仕組みです。
石炭火力のメリット
石炭はには以下のようなメリットがあります。
- 他の石油など化石燃料に比べて今後採掘できる年数が長い
- 石炭が採れる地域も分散しているので安定供給できる
- 原油やガスに比べて価格が安い
- したがって、安い燃料費で発電ができる
石炭火力のデメリット
石炭火力は環境によくない、と言われています。
- 最新型でも天然ガスの2倍のCO2を排出する
- 石炭火力は世界の電力の4割、CO2排出量(エネルギー起源)の3割を占める
地球温暖化がさけばれているなか、二酸化炭素CO2を多く排出するような石炭火力は地球に良くない!という流れになっています。
石炭火力に対する銀行の姿勢
石炭火力向け融資に積極的だった
地球温暖化問題に取り組む国際NGO「レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)」によると、化石燃料に関連する企業向け融資ランキングは、JPモルガン・チェース(649億ドル)、シティ・グループ(524億ドル)、バンク・オブ・アメリカ(480憶ドル)、英ウェルズ・ファーゴ、カナダ・ロイヤルに続いて、6位に日本の三菱UFJ銀行(322.4億ドル、7位にみずほ銀行(322.0億ドル)の順位。三井住友銀行は202億ドルで18位。
これまで金融機関にとって、石炭火力発電所向け融資はスタンダードであったわけです。
欧米発で流れが変わることに
ゴールドマンサックスなど米大手銀行は2019年末以降、相次いで石炭火力への融資停止を表明しました。
JPモルガン・チェースは、石炭採掘会社向けや、石炭火力プロジェクト向けの新規融資を停止し、既存融資も段階的に削減して2024年までにゼロにするという方針を打ち出しました。
ESG(環境=Environment、社会=Social、企業統治=Governance)というキーワードもあいまって、こうした石炭火力向け撤退が加速しています。
日本の銀行はどうするのか
メガバンクの動きが注目される中、三菱UFJ銀行は2019年5月に石炭火力向け方針を公表しています。
「新設の石炭火力発電所へのファイナンスは、原則として実行しない」としました。
ただし、高効率発電などの採用を支持すると明言していました。高効率発電とは、高い発電技術によって実現できているもので、従来よりもCO2排出が少ない発電所を作れる技術を日本の企業は持っています。
日本のトップ銀行として、こうした技術力をサポートすることの配慮した方針なのでしょう。
三井住友銀行は、新設の石炭火力への投融資などの支援は原則行わないとしています。
三菱UFJ銀行と同じく、「超々臨界圧発電方式」等の高効率発電について「環境へ配慮した技術」として「慎重に対応を検討する場合がある」という表現で、今後も融資する可能性があるようなコメントでした。
その後、以下のみずほ銀行の公表と時を同じくして、融資は原則行わないスタンスに切り替えました。
みずほの方針転換はちょっとした話題に
みずほフィナンシャルグループは2020年4月、新設の石炭火力向けの投融資をやめる投融資指針を同年6月から適用すると発表しました。
みずほ銀行の前身である、日本興業銀行は、かつて長信銀として、日本の石炭火力発電の成長に大きく貢献し、その経験を生かして、世界中の石炭火力発電や様々なインフラ開発に貢献してきた銀行です。
その銀行が、今後石炭火力向け融資をやめる、というのはかなり踏み込んだ決定でしょう。
メガバンクの足並みが一応そろいました。
今後の石炭火力の方向性(まとめ)
超超臨界方式などの高効率な発電技術は日本の強みです。
実際、発電所技術を世界に輸出する、というのは政府主導のインフラ輸出政策にも含まれます。
確かに、石炭火力だけを取り上げると、温暖化対策にネガティブな印象ではありますが、石炭のメリットも踏まえて、バランスよく活用できる機会を残していくことも大事なことかと思います。
銀行は、最新技術を正しく評価し、バランスの利いたエネルギーミックスの市場に対して、リスクをとりながら、適切な資金を供給する役割であることには変わりません。
最後までお付き合いありがとうございました。
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