昨今の働き方改革の流れを受けて、世の中はテレワークが一般化しつつあります。また、最近の新型コロナウイルスなどの対策のため在宅勤務を原則とする企業も出てきています。
銀行業界では長らくテレワークは難しいとされてきましたが、テレワーク拡大の動きはここ数年で徐々に広がってきています。
銀行の固定観念
情報の持ち出し禁止
銀行は、顧客の資産情報や信用情報など一般的には機微情報とされるものを取り扱っており、これらを銀行外に持ち出すことは禁止されています。どうしても持ち出したい場合は上司の許可が必要になっている銀行が大半でしょう。
情報が記載されている書類を外に持ち出して、その書類を紛失してしまうと大変です。
情報漏洩事故は信用問題
大切なお客様の情報漏えいです。当然ながら行内ルールの事務ミス・コンプライアンス違反にとどまらず、金融庁への報告も必要です。
個人のミスでは済まされず、銀行全体の責任を問われることになります。
信用情報を扱う銀行にとって大ごとなのです。
こうしたことから、銀行員が家に仕事を持ち帰って仕事することはご法度、という固定観念が長年あり、制度や意識そのものがテレワークから真逆に位置していました。
働き方改革の後押し
働き方改革で変化あり
近年の働き方改革により、仕事の効率化、残業時間の削減、勤務形態の多様化といったキーワードがよくみられるようになりました。銀行でも同じでしょう。
勤務体系の多様化がテレワークを後押ししてくれるようになった
こんな風に感じる現役銀行員の方も少なくないでしょう。
現在の銀行を支える中堅世代(30代後半から40代前半あたりのイメージ)は子育て真っ盛り。人によっては親御さんの介護の話も出てくる世代です。こうした家庭環境を踏まえて、毎日定時フルタイムで働き続けることができない銀行員は少なくありません。
以前はこれ以上働くのは難しいので退職または転職することが多かったと思います。銀行側もやむをえないとしてきたところでしょう。
リテンションの課題解決にもつながる
しかし、ちょうどいまの中堅世代は大学新卒時に就職氷河期の時代であり、人材が少ない世代であり、銀行にとっても貴重なリソースのため、退職・転職されても困ります。
何とかして長く働いてもらうには制度改革をする以外にない、ということですね。
こうしたある種リテンションといえるニーズの背景から、より行員にとって働きやすい環境を整備する必要性が、働き方改革の風潮と相まって高まってきたわけです。
そこで既存のルールや意識にとらわれない多様性のある行員の働き方に応える職場環境作りにつながってきました。
大手行の事例
赤い銀行は2016年7月にメガバンクで初めてテレワークを導入しました。
本部の企画担当や、育児・介護ニーズのある役4,000人が対象でした。
当時は週1回の在宅勤務が可能となる制度でした。在宅用の専用端末を支給してセキュリティ対策を実施。業界トップ行のこうした動きは業界にテレワークの意識を強く与えることになったと思います。
その後、緑の銀行や、旧長信銀系の銀行が相次いでテレワーク制度を実施しました。いまでは地方銀行にも広がってきています。
テレワークを行う銀行は着実に増えている
銀行でテレワークが進む理由
これまで難しいとされてきた銀行でテレワークが進んでいる理由を思いついたままに並べてみました。
- 働き方改革の風潮
- 育児、介護ニーズの対応
- 退職予防のリテンション対策
- 人事制度改革を通じた行員の満足度の向上
- 新しいことをやっている感じを出した株価対策
- パソコンが安価になり、行員に配布できるようになった
- セキュリティ技術が進捗
- ペーパーレスが進み、書類現物の移動が無くなった
- 流行型ウイルス対策
- 大規模災害時に備えた訓練、体制整備
- 東京オリンピック時に備えた訓練、体制整備
こうして考えるとテレワークを進めるというより、進めないと業界から取り残される危機感みたいなものも感じますね。
現場として大きいのは昔のように書類を持ち歩くことがなくなったことですね。自宅PCから銀行のイントラにリモートアクセスして、あたかも職場にいるのと同じ環境で仕事ができます。もちろん、自宅PC自体に資料をダウンロードできないようになっています。
実際にテレワークしてみた
テレワークのメリット
私もテレワークしてます。
前述の通り、仕事の情報は会社のデータベースにあるので、リモートで会社の環境にアクセスできる会社支給のPCを使って家で仕事ができます。普段から書類はほとんどプリントアウトしていないので、職場にいても自宅にいても環境はほとんど変わりません。内線付きの携帯端末も支給されているので、会議も電話でいつでも入ることができます。
なので、昔ながらの顧客情報書類持ち出しによるリスクは無いです。
テレワークのメリットは、
- 通勤時間がかからない(片道1時間、往復2時間の削減)
- ちょっとした家事を手伝える
- 奥さんと一緒にお昼が食べれる
- 同僚との無意味な雑談が無い
- 仕事に集中できる
- 夜は家族みんなでご飯が食べられる
家事が手伝えることや、家族との時間が増えることはメリットとして大きいと感じました。仕事については、最初はちゃんとできるか不安でしたが、意外と集中して取り組めています。
テレワークのデメリット
一方で、デメリットとしては、上司や部下とのコミュニケーションがとりずらいことが挙げられます。
ここは相当意識してこまめに連絡を取るか、定期的に短時間の電話ミーティングを行って、情報共有や相談するようにしないといけないと感じました。
私の場合はテレワーク時はチャット機能や個人のLINEを多用してこまめに連絡するようにしています。
最近は週に1, 2回は出社して、同じく出社している同僚とコミュニケーションを図っています。
バランスを意識して行動、といったところでしょうか。
まとめ
銀行員のテレワークは可能です。(ただし、現金を扱う人や、銀行特有である日銀と接続している端末や警察データベース等据え置き端末を扱う業務に携わる人はいまのところ難しいですけど)
銀行員一人一人が意識改革をして、新しい働き方を実践すれば、新しいビジネスアイデアも生まれると思っています。
経営が働きやすい職場環境を作り、現場がそれにこたえていく。
良い銀行が一つでも増えると、日本の銀行業界もまだまだ成長することができるでしょう(と信じたい)
このままだと海外の銀行に何周も周回遅れをとったまま日本の金融界は沈みます。
危機意識を持たねば、です。
では。
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