金融サービス仲介業の誕生

金融
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来年にも新しい業態が金融業界に誕生するようです。政府は金融サービス仲介法制に関するワーキンググループを発足させ、横断的な金融サービスが提供できる法整備を目指しています。

金融業界にとってどのような意味があるのでしょうか?

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金融サービス仲介法制の狙い

細かい話をしてしまうと難しくなってしまうので、なるべく簡単に解説しようと思います。

日本の金融業界は、顧客に迷惑がかからない、金融業界が混乱しない、などを目的に業態や商品毎にあらゆる法規制があります。

銀行の商品は原則は銀行が扱うのですが、銀行代理業の認可を取得すると、事業会社でも銀行の口座の開設の案内(法的には口座開設の媒介)ができるようになります。住宅ローンも提供できるようになります。

証券会社が取り扱う上場株式なども、金融商品取引法に基づいた認可を取得すると、その証券会社以外の人が販売することができます。

保険も同じく。代理店がありますよね。

銀行、証券、保険、それぞれ法律や許認可がばらばらで、商品の仲介をしたい場合にはそれぞれ必要な許認可を取得しなければなりません。

これをまとめて横断的に取り扱うことをできる仲介業を誕生させよう!というのが今回の金融サービス仲介法制の検討の狙いです。

金融版・食べログの誕生か

よく例に挙げられるのが、クラウド会計データの会社が、利用企業の財務データを活用して、融資の案内ができるようになる、その時に銀行口座もセットして、さらに振り込みなどの金融サービスを一緒に提供できるようになる、といったパターンです。

金融商品も特定の金融機関だけでなく、さまざまな金融機関のさまざまな商品を扱えるようになり、いわば食べログの金融版ができることになります。

利用者にとっては、ワンストップで利用でき、商品比較もできるので、自分にあった商品を選択することができるようになります。

提供側も幅広い商品やサービスを提供することができるため、これまでの銀行や証券会社、保険会社が提供していたサービスよりも利便性の高いサービスが生まれる可能性があるわけです。

いまの金融機関への影響

いまの金融機関はこれまで法規制で守られてきた、つまり異業種参入に制限があったため、自分たちの独自の分野があったわけですが、今回の金融サービス仲介業が発生することで、その参入障壁は一気になくなる可能性があります。

送金分野では、例えば銀行間の決済を担っている全銀システムが将来は無くなるかもしれません。詳細はこちらでも解説しています→全銀システムの秘密

銀行はあぐらをかいているわけにはいかないです。これまで提供していたサービスが新しい金融サービス仲介業者のものに切り替わってしまうかもしれません。

今回の金融サービス仲介業の検討は業界の活性化という目的はあるものの、既存の金融機関にとっては、非常に厳しい現実にさらされることになる動きでしょう。

ちなみに、2021年夏に法整備がなされて金融サービス仲介業が誕生するスケジュールで動いているようです。今後の動きに注目ですね。

 

銀行の戦略が問われる時代に

日々新しいサービスが生まれる中、金融サービス仲介会社が誕生すればその動きはさらに加速するでしょう。

銀行は自社で負けないサービスを作るのか、金融サービス仲介会社を味方につけるのか、その戦略が問われることになると思います。時間的猶予はないですね。先を見据えた活動を始めないと、あっという間に取り残されてしまうでしょう。というかお客さんが離れて、その銀行は市場から撤退、ということにもなりかねませんね。

一方で、金融サービス仲介会社もそう簡単には市場を変えることはできないのでは、という見方もあります、最近ではオリガミがメルカリにタダ同然で買収されましたが、フィンテック業界もマネタイズの観点ではまだまだ厳しい状況が続いています。新しいサービス提供にはそれなりに投資が必要になってくるわけですが、それをしっかり回収できなければ継続的に事業を続けることは難しいですよね。

個人的には資本力のある銀行と柔軟な発想を持つ新業態会社が手を組んで新しいサービスを市場に投入するのが理想的だと思います。

今後数年間で、面白い組み合わせと面白いサービスが市場に誕生すれば、日本の金融業界の未来もまだまだ捨てたもんじゃない、と言えるでしょう。

銀行側も、柔軟な発想を持つ若手中堅を重要なポストにどんどん抜擢して、柔軟な発想と早い動きを見せていかないと、フィンテック業態に相手にされなくなるでしょう。若手中堅もやりがいをもって業務に邁進し、銀行の組織も活性化すると思います。

そのような動きができない銀行は先行き厳しい!と言っちゃってよいかもしれませんね。

異業種参入の脅威はこちらの記事もご参考まで→やっぱり銀行は不要なのか

銀行員は自分次第

このような環境下、銀行員はどうすればよいのか。

自分次第でいかようにもなると思います。

まずは、市場の流れをよく把握していること。毎日の自分の仕事だけではなく、世の中の動きを見て、自分なりにストーリーを描いておくこと。ストーリーは日々どんどん変わります。「これからこうなるのではないか」「この商品は、あの産業にマッチするかも」と最初は漠然としたイメージでもよいと思います。

そうした日々の積み重ねで、銀行の経営戦略に対する自分なりの意見や、自分の仕事に対する考え方などが見えてくるのではと思います。

結果、その銀行で一生懸命頑張る、でもよいし、他の銀行に転職する、金融サービス仲介会社に移る、あるいは異業種に転職するでもよいかもしれません。昔と違って転職のハードルは低いので積極的にチャレンジすることはとても良いことだと思います。

ただ、いま私自身、採用面接も行っていますが、銀行から金融関連のベンチャー企業に転身したものの、ほんの数か月で転職したい!という希望者が少なくなりません。転職するにあたっては、現実的な部分についてもよく考えてみることが必要かと思います。

いずれにしても、危機感を持って金融業界を一緒に盛り上げてくれる人が日本で一人でも多くなることを願います。もはや日本の金融は周回遅れだと思いますので。

お付き合いありがとうございました。

では。

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プロフィール

この記事を書いた人
Terry

新規事業企画担当として日々奮闘。日本の金融業界の動きや世界の金融の潮流、銀行員お役立ち情報などを発信しています。

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